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救急棟の玄関口に到着した救急車のドアが開き、一番先に出てきたのは同乗してきた黛だった。
忍は、美羽の荷物を手に降りて来た黛の姿を認めた時、ああやはり! と全身の血の気が抜けるような錯覚を覚えた。
しかし、直ぐに気持ちを奮い立たせ、降りてくるストレッチャーを運ぶ構えに入った。
「緒方!」
忍は、自分の姿に気付いた黛が、頭を下げていたのは分かったが、応える暇は無く、美羽を載せたストレッチャーと共に処置室に入って行った
酸素マスクを装着された美羽の顔面は血の気が無く真っ白だった。
意識はない。
一度は心肺停止状態に陥ったが、救急救命士の処置により心拍は回復した、というのがバイタルを伝達する救急隊員からの報告だった。
「アストラップの準備を! それから中心静脈穿刺するからそっちもだ!」
忍は指示を出しながら、救急隊員から渡された、美羽が持っていた紹介状に目を通した。
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