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昨日の透析時の心電図から容態まで、事細かに記された紹介状から、忍は美羽が起きるのもやっとの状態であったことを知った。
美羽は、こんな状態で今夜のコンサートに出かけた。自分との約束を守る為に。
自分に、会う為に。
忍は胸が張り裂ける想いで、意識のない美羽の手を握り締めた。
「必ず、助けてやるからな」
きっと顔を上げた忍は準備の出来た処置から取り掛かった。
美羽が倒れた時、傍にいた黛は、救急隊員が運ぶ病院を探す際、機転を利かせ、彼女の荷物の中からこの病院への紹介状を見つけた。
そして、そのまま救急車に同乗してきたのだ。
「顔を上げてくれ、黛」
ある程度の処置が終わりICUに運ばれた美羽の容態が少し安定したところで廊下に出てきた忍は、頭を下げたままの黛に静かに言った。
「お前のせいじゃない。
美羽は昔から具合が悪ければ悪いほどそれを隠すタチなんだ。
今回はかえって、お前のおかげで助かったんだ。
礼をいうよ」
倒れた時に美羽の事情を知る者がいなかったら? 一人だったとしたら? そう考えただけでゾッとする。
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