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顔を上げた黛は、忍の言葉に、すまなそうに首を振った。
「そう言ってくれるなら救われるけど……、
それより美羽ちゃんは」
マスクを外しながら深く息を吐いた忍は、座って話そう、と廊下のベンチに黛を促した。
「とりあえずはなんとか持ちこたえてくれたが、まだなんとも言えない。
意識レベルを落として心機能の回復を待って、それからだな」
そうか、とため息を吐いた黛に、忍は静かに聞いた。
「美羽は、最後まで聴けたのか?」
黛は、深く頷いた。
「コンサートが終わってロビーに出たところで、倒れたんだ。
まるで、そこまで我慢していたみたいに突然」
美羽らしい、と彼女の姿を脳裏に浮かべた忍は胸を掴まれるような痛みに顔をしかめた。
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