約束のラフマニノフは、別れの序曲 #2

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「すみません、緒方先生。お休みだったのに」  病室を出たところで康太が忍に頭を下げた。 忍は手袋をはずしながら静かに言った。 「どちらにしても、お前一人じゃできないことだったからな。 よかったんだ、これで。 ただ、今やるべきことの優先順位だけは間違えるな」  康太は頭を下げたまま、はい! と答えた。 「まだ予断は許さない容態だ。 もう休みは返上だな。 俺も今夜はずっといるから」  そう話す忍の脳裏に浮かんだのは、今夜のコンサート会場である池袋の芸術劇場の広いロビーで立ち尽くす美羽の姿だった。  結局、アイツに頼むことになってしまった。  最後のチャンスもこれで消えた、と心中で呟いた忍は大きく息を吐き、ナースステーションへ向かって歩き出した。 *
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