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走り去った誠の後ろ姿を見送る黛に忍は言った。
「忙しかったんだろ。
本当に悪かった」
黛は、首を振った。
「美羽ちゃんに、会えたからよかったんだ。
最後はこんなことになって心配は残るけどね」
少しの沈黙を経て、忍は低く静かに言った。
「美羽は、俺が必ず助ける」
黛は忍を見た。
‘俺が’という言葉に妙な力が籠っていた。
黛には、何か覚悟めいた意味合いが含まれているよう思えた。
医師として、とは違う何かだ。
さり気なく、忍の表情からその‘何か’を探ろうとしたが、今、目の前にいる彼からは何も窺い知ることはできなかった。
「それよりお前、いつ日本を発つんだ?」
忍に聞かれ、黛は気がかりを胸にしまい、静かに答えた。
「明後日」
「あそこは今問題なく渡航できるのか」
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