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美羽は手にしていた携帯の時計を見た。
約束の時間はとうに過ぎている。
コンサートの開演時間が刻一刻と迫っていた。
来ないのだろうか、という考えに思い至った時、美羽はハッとした。
何故、あんなことがあったのに、自分は兄が約束のここに来てくれるなどと思ったのだろう。
「私ったら……」
来るはずのない待ち人の為に、自分はのこのことここに来てしまった。
なんの疑いもなく、ただ兄に会えると思ってしまった愚かさに気付いた時、美羽はその場に崩れ落ちそうになった。
よろけ、傍にあった柱に掴まった時、美羽は自分の方へ真っ直ぐに歩いて来る見覚えのある男性を視界に捉えた。
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