約束のラフマニノフは、別れの序曲 #2

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 この約束を交わした時に、もしものケースまで考え、対策を講じてくれていた。 兄の気持ちがますます分からなくなる。  美羽をまるごと包み込んでくれた兄の優しさは、愛情だったのか。 それとも、本当にあの言葉の通り、負い目からの償いでしかなかったのか。  二枚のチケットを見つめ、複雑な表情を浮かべたまま動かない美羽に黛は優しく語りかけた。 「緒方の気持ちはそこに詰まっているよ」  美羽は顔を上げ、黛を見た。 が、彼はそれ以上のことは言わず、腕時計を見た。 「そろそろ行かないとね」 「あ、はい」  美羽は、急に‘現実’という扉が開かれたような錯覚を覚えた。  そうだ、このコンサートには兄が示してくれた意味があった、と美羽はチケットを見た。
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