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この約束を交わした時に、もしものケースまで考え、対策を講じてくれていた。
兄の気持ちがますます分からなくなる。
美羽をまるごと包み込んでくれた兄の優しさは、愛情だったのか。
それとも、本当にあの言葉の通り、負い目からの償いでしかなかったのか。
二枚のチケットを見つめ、複雑な表情を浮かべたまま動かない美羽に黛は優しく語りかけた。
「緒方の気持ちはそこに詰まっているよ」
美羽は顔を上げ、黛を見た。
が、彼はそれ以上のことは言わず、腕時計を見た。
「そろそろ行かないとね」
「あ、はい」
美羽は、急に‘現実’という扉が開かれたような錯覚を覚えた。
そうだ、このコンサートには兄が示してくれた意味があった、と美羽はチケットを見た。
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