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話しを聞く忍の表情が、次第に変わっていった。
美しい顔から感情が消え、冷たくなっていく様に、康太は自身の身体が総毛立ち、震えそうになっていくのを感じた。
とうとう声が出なくなってしまった康太に、忍は。
「それで?」
怒りを抑えているのか。
だとしたら、何に対しての怒りか。
口を噤んでしまった康太は、必死に考えを巡らせていた。
もしかしたら、あんなミスを犯しておきながら、まだこんなことをやっているのか、とこのオーベンは怒っているのだろうか。
話しの続きを促され、得体の知れない恐怖と内心戦いながら、康太はカラカラに乾いていく喉を固唾を呑み込むことでなんとかしのぎ、口を開いた。
「もしかしたら、こちらで何か動きがなかったか、とその知人に聞かれたんです……」
尻すぼみに小さくなる声に、耳を傾けながら聞いていた忍は、腕を組み、口元に手を当てて思案し始めた。
俯き加減になってしまっていた康太は、そっと上目遣いで忍の表情を窺った。
忍は、思案の体勢に入ったまま動かない。
ドキドキという鼓動が、深夜の静まり返る医局に響き渡っているように感じられた。
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