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そんな康太に、忍は諭すように静かに語り掛けた。
「お前のしようとした事は、今回は、お前の将来を考えて、お前自身が表に出すことはしない方が得策だ。
今お前がすべきことは、見つけた不正を堂々とすっぱ抜いても誰も文句が言えないだけの地位を築くことだ。
周りを変えられる力をつけろ」
康太の目に、再び意志の炎が灯されたように力が戻ってきた。
「緒方先生……」
「決して流されて染まるような医師になるな」
それまで冷徹なまでに無表情だった忍の顔に微かな笑みが滲んだ。
「お前のしようとしたことは間違ってはいない。
その正義、自信を持って胸に刻んでおけ」
込み上げる想いが言葉にならず、頷くことしか出来なかった康太に忍は言った。
「お前が見つけた今回の件は、俺がケリを付けてやる」
康太は、え? と改めて忍の顔を見入った。
「緒方先生、それはどういう……」
「お前の正義を無駄にはしない、ということだよ」
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