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再びパソコンに向かった忍は、続けて言った。
「ともかく、今回の件、お前はもう一切関わるな。
話しはこれで終わりだ。
早く病棟に戻れ」
忍はそう言った切り、もうこちらを向こうとはいなかった。
端正な横顔はこれ以上の会話を拒絶している。
康太は頭を下げて医局を後にした。
病棟に向かう深夜の廊下は静まり返り、冷え冷えとした空気が薬品の匂いと溶け合い、少し不気味な空間を作り出していた。
時折どこかから微かに聞こえるパタパタという足音が、看護師の足音か医師の足音のはずなのに‘それ以外の者’に思えてくる。
康太は、森閑とする薄暗い廊下を歩きながら、忍が見せた表情を思い出していた。
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