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忍は美羽の首元から繋がる管を見た。
その先には点滴が二つ。
「いや、こっちは使わない。
そうだな、足背(動脈)か大腿(動脈)――」
そう言って忍は美羽の足元に目をやった。
足の甲からも管が繋がり、先には点滴。
腕を組み、思案していた忍は顔を上げた。
「大腿でいこう。
今直ぐ穿刺するから準備してくれ」
看護師が、はい! と返事をし、準備の為に足早に立ち去った。
少しして、指示を受けた別の若い看護師がやって来、美羽の寝間着を脱がせにかかった。
大腿動脈の穿刺は、足の付け根付近。
下半身をほぼすべて晒さなければいけない。
忍はさりげなく傍にいた医師とその場を離れた。
美羽の身体を人目に晒さなければいけない、という突き付けられる現実に、忍は締め上げられるような胸の痛みを覚えたが、自分は医師だ、と言い聞かせ、堪えるしかなかった。
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