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黛は、緒方家の兄弟が絶妙なバランスで均衡を保っていることを感じ取った。
兄に逆らわず、しかし、押さえつけられているわけでもなく、尊敬と畏怖の念を持つ。
兄は、弟達に、兄としての背中を見せ続ける。
黛は、ふと思う、その中で、彼女はどんな存在だったのだろう。
「弟達には暴君ぶりを発揮していたお兄さんも、妹には優しかった、というわけかな」
黛の問いかけに、それが……と答えかけた誠は一瞬言葉を詰まらせた後、呟くように言った。
「それが、不思議なんですよ」
「不思議?」
黛は、解し兼ねる誠の言葉をリフレインした。
誠はゆっくりと、記憶を辿るように話し始めた。
「美羽は幼い頃、兄とは殆ど会話を交わしたことがないんじゃないかな。
兄は、美羽とは一切と言ってもいいくらい関わりを持たなかったんですよ」
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