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意外な言葉は事を益々難解にする。
黛は、驚愕の声を漏らした。
「一切? 関わらない?
でも今はあんな……」
黛の驚愕はもっともだった。
今の忍を見れば、とてもそうは思えない、しかし、黛には思い当たる節があった。
昔からあまり家族の話をしなかった忍は、稀に弟達のことは話しても、妹がいること、まして‘美羽’という名など口にしたことはなかった。
黛が、忍に妹がいることを知ったのは、自身が教鞭を取る大学に美羽が入学し、‘妹をよろしく’と言われた時だ。
恐らく、忍の中ではずっと‘妹’という存在自体が稀薄だったのだろう。
「兄が、美羽のことを気に掛けるようになったのは、美羽が倒れて、そうだ、透析患者になったあの頃からですね。
いや、気に掛ける、という言葉じゃちょっと表現しきれないくらいの入れ込みようだった」
黛が模索しているであろう事を察した誠は、その疑問の答えを導くことを話し、末尾に意味深な言葉を足した。
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