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誠は、いやそれは……と苦笑いする。
「兄が、僕に話したがらないでしょう」
黛は、そんなことはないよ、と言い、静かに笑った。
「アイツだって、話せる相手が誰か、誰が一番信頼できるか、ちゃんと分かっているよ」
誠は前を向いたまま、少し首を傾げ、そうかなぁ、と呟いていた。
黛はそんな誠を見て柔らかな笑みを浮かべていた。
日本に置いていく気がかりと心残りは、この短い時間、狭い空間でほんの少しばかり解消できたかな、と思いながら黛は車窓から見える眠らぬ街の風景を目に焼き付けていた。
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