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いつもなら直ぐに本題には入らず雑談を始める瑠奈が固い表情のまま愛用のエルメスのバーキンから書類を出す姿を見た大河は低い声で聞いた。
「何か分かったのか」
「まあね」
瑠奈はファイルされた書類を大河に渡した。
「N社は、どうも新薬絡みでK省に目を付けられていたみたい。
臨床検査関連の奨学寄附金とかもあるけど、どうもこの新薬、K省に強い政治家が承認に関わっていたり、とかぼろぼろいろんなものが出てくる。
最初は興味無さげだったうちの所長が俄然張り切り出したわ」
渡された書類に目を通しながら瑠奈の話を聞いていた大河は苦い顔をした。
結局、悪いムシは金が生まれるところに群がる、という話に尽きるじゃないか。
沸々と湧いてくる怒りを抑え、大河は聞く。
「で、うちの逃げた社員は結局どんな立ち位置だった?」
手元にある書類には、それと分かるものは無かった。
大河は顔を上げて瑠奈を見た。
大河のデスクの傍から空いているキャスター付き椅子を引き寄せて座った瑠奈は足を組み、神妙な口調で話し始めた。
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