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「彼の父親は、N製薬で営業成績トップクラスのMR(製薬会社の営業マン)だったそうよ。
今は本社でそれなりの地位にいる。
だけどそこに随分からくりがあるみたい。
色んな意味でやり手なのね」
大河は、腕を組み、思案し始めた。
瑠奈の言う、色んな意味、という言葉には文字通り広義がある。
要するに、その父親は、自分の手を汚さない為に息子を使ったのだ。
「当事者とのやり取り、金の受け渡しにアイツを使った、ということか」
そういう事ね、と肩を竦めた瑠奈は、話しを続けた。
「どうして今回突然こんな事に、というとこなんだけど」
核心に迫る事が聞ける、と大河は少し身を乗り出した。
「ずっと二課で例のサイトをマークしていたみたい。
で、あの日の前日の夜に動きがあって、逃げられたり証拠を消される前に家宅捜索を、という流れになったみたいね」
「動きはどこから」
短く聞いた大河に、瑠奈は小声で答えた。
「これはここだけの話だけど、B医大」
大河の中で、何かが弾けるような感触があった。
どくんどくんとゆっくりと大きな鼓動音が耳につく。
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