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美羽に促されて誠は肩を竦め、低く静かな声で言葉を継いだ。
「兄さんに、殴られた」
美羽は、信じられない、という表情で誠を見つめて息を呑む。
「大河の身体、吹っ飛んで床に倒れてしまうくらいの力だった」
「どうしてそんな……」
誠は、分からない、という風に首を小さく横に振った。
「どちらにしても、僕は兄さんがあんな……相手の言い分、一言も聞かずに殴るのなんて、初めて見て……」
話しながら立ち上がった誠は意味ありげにクスクスと笑い出した。
「なに、まこちゃん」
首をかしげる美羽に誠は、いや、と笑いながら美羽の頭を優しく撫でた。
「兄さんも、自分と同じ人間なんだ、なんて思ったわけ。
ともかく、美羽は今はちゃんと治すことに専念しなさい。
美羽の意識が戻ったことはちゃんと大河にも伝えておくから。
大河が来たら、ちゃんと美羽、話しをしないと駄目だよ。
大河のヤツ、今会社が大変らしいのに、合間を縫って美羽の顔見にずっと通ってくれているんだからさ」
一気にまくし立てた誠は、ナースステーションに直接知らせに行く、と席を立った。
「あ、まこちゃん」
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