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部屋から出て行こうとした誠を、美羽は呼び止めた。誠は、ん? と振り返る。
「ありがとう……」
小さく、そう呟くように言った美羽に、誠はニコッと笑った。
「急にいろんな情報が入り込んで頭、混乱しちゃってるだろうから、もう少し眠りなさい」
誠は、ひらひらと手を振って、廊下に出て行った。
誠が出て行って静かになった部屋を、美羽は見まわした。
心電図の音、点滴を送る機械の音が微かに聞こえるのみの白く無機質な部屋。
壁に掛かったカレンダーが、一月になっていた。
ああ、もう年が明けていたの。
眠っているうちに、しっかりと時は流れていた
美羽はゆっくりと視線を窓へ移した。
大きな窓からは、澄んだ青い空が見えた。
線を引いたような雲が一筋、浮かんでいる。
木々の枝が一切見えないことからここが高層階であることが窺えた。
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