21人が本棚に入れています
本棚に追加
高く飛ぶ鳥が弧を描くように飛んで行く。
ここからはどんな鳥なのかは分からないが、翼を拡げ大空を自由に飛ぶ姿に、美羽は思わず手を伸ばした。
「じゆうに、……とびたい」
長く人工呼吸器の管に圧迫されていた喉から漏れる声は掠れて、なかなか元には戻らない。
美羽が喉元に手を当ててため息を吐いた時だった。
「あ……」
入口のカーテンが開き、ブルーのウエアを着た医師が現れた。
「お兄さん……」
忍は美羽の傍に来ると、そっと手を取り、言った。
「美羽は飛べる、自由に。
飛べるようにしてやるよ、俺が」
涼しげに見える切れ長の目に、ほのかに熱が帯びて見える。
兄の、意志か温もりか、優しさか、愛情か。
「お兄さん、今私が呟いたこと、聞こえたの」
最初のコメントを投稿しよう!