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今回の件で社員達は大河の経営手腕を再認識することになったのだが、大河自身は、行方をくらましたままの友人に対する鬱々とした感情を抑え込むのに必死だった。
乱暴にキーボードを叩いていた大河の元にやって来た相棒の笠原はデスクにコーヒーを置き、言った。
「アイツのことはもういいよ。
ともかくうちの会社自体は関係ないってことが当局も分かったみたいだし、こっちはこっちでなんとかしよう」
「そうだけどよ」
さんきゅ、と言いながらコーヒーを手にした大河はため息混じりに言った。
「みんなに申し訳ないからさ」
マグカップに口をつけながら、デスクが並ぶ広いオフィスをぐるりと見回した。
夜中になっても帰らずに働く社員達の姿が沢山見られた。
あの件以降、大河は社長として持っていた部屋を使っていない。
広いオフィスを一望できる位置にデスクを置き、そこで皆と同じ状況下で仕事を熟していた。
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