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笠原が呟くように言った。
「みんな、分かってるよ」
なにを? どう分かってる? 喉元まで出かかった言葉を大河は呑みこんだ。
こんな問いは愚問だな。
ピンチ、もうダメだ、という窮地にも、皆は自分を信じて付いてきてくれた。
それに報いる為には、自分は成果を残すしかな方法はない。
「借りは仕事で返してみせる。
この会社を守ってみせる」
カップを置いた大河がそう言った時だった。
「社長! 弁護士先生です」
入口となっているエレベーターの近くにいた社員の声が上がった。
大河が顔を上げると、夜会巻きよろしくのヘアスタイルに目の覚めるような色のジャケットと超ミニスカート姿の弁護士、戸叶瑠奈がカツカツと靴音高くこちらへやって来るのが見えた。
大河は、よお、と手を挙げ、笠原は気を利かせて席を外した。
「ありがとな、お陰様で押収品はほとんど返ってきた。
とりあえず社本体への疑いは晴れたみたいだ」
どういたしまして、と近くに来た瑠奈は言った。
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