瓦解 #2

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 奈緒の声は、美羽が思わず顔を上げたほど柔らかで穏やかだった。 「おかあさん」  胸に、ずっとため込んできた感情がどっと溢れ、言葉はそれ以上出てこなかった。 代わりに堪えていた涙が溢れる。 それを見た奈緒は立ち上がり、バッグから出したハンカチで美羽の頬を拭った。  奈緒のハンカチ香りが、美羽の鼻先を掠めた。 幼い日、自分を可愛がってくれていた頃の母の香りと変わっていなかった。  美羽の胸が熱くなる。思わず声を上げて泣き出していた。 「おかあさん、おかあさん……」  奈緒は、美羽の頭をそっと撫でた。 その手から伝わる感触は優しかった。 「美羽、あなたが悪いんじゃないの。 でも、どうしても当たらずにはいられなかった。 本当に、ごめんなさい」  美羽は、首を振った。
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