38人が本棚に入れています
本棚に追加
奈緒の、苦悩の根本にあるものはまだ美羽は知らない。
しかし、奈緒の冷たく厳しい態度の原因には、美羽の知るものもあった。
幼い日には、紛れもなく母は、母だった。
美羽は意を決したように目を閉じた。
母が心穏やかになれるのなら――。
深呼吸をし、ゆっくりと口を開く。
「お母さん、私とお兄さんは兄妹だから。
それ以上のことはもうないから。絶対に」
美羽は今、覚悟を決めたのだ。
兄への想いを断ち斬る覚悟を。
しっかりと口にし、言葉にすることで胸に刻んだ。
しかし同時に、美羽の胸には引き裂かれるような激しい痛みが走った。
改めて、兄との決別を決意しなければいけない現実。
どうして、私はお兄さんの妹になってしまったのだろう。
兄を、愛していたのに。
皮肉にも、口にした瞬間、自らの想いを再確認してしまうことになった。
最初のコメントを投稿しよう!