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美羽の中に浮かぶのは、愛してやまない男の影。
しかし、胸に溢れるこの想いは、抹消しなければいけない。
美羽は、今瞬きすれば涙が零れる、と見開いた目で奈緒を見た。
美羽の傍らに座る美羽は俯いたまま言った。
「ごめんなさい、そうして。
忍だけは、忍とあなたの間だけはどうしても認められない」
奈緒の声は、以前のように冷たく硬い声ではなかったが、静かで低くしっかりとした言い方だった。
有無を言わせない重さがあった。
顔を上げない奈緒を見て、美羽は目を閉じた。
「うん、約束する。
お兄さんとは、もう何もないって」
これは、家族の形を守る為。
深く息を吐いた美羽は心の中で呟いていた。
さよなら、私の‘愛’。
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