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大河が、美羽の手を握り締めたまま泣いていた。
「ごめんね、大河。
心配させてごめんね」
美羽の細い声に、大河は顔を上げぬまま首を振った。
片手で顔を覆う大河の嗚咽が美羽の胸に浸みる。
ずっと、心配してくれていたの。
美羽は、空いてる方の手を伸ばし、大河の少し茶色の短い髪に触れた。
「ごめんね、黙っていなくなって」
美羽のすまなそうな言葉に大河はやはり首を振っただけで顔は上げなかった。
大河の髪の毛が蛍光灯の光を反射している。
美羽は優しくその髪を撫でた。
「ねえ、大河」
美羽の、改まった呼びかけに大河はやっと顔を上げた。
涙は引いたようだが、目は赤い。
美羽はクスリと笑って大河の頬に手を添えた。
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