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「でも、黙っていなくなるのだけは勘弁して欲しいな」
腕をフワリと緩ませた美羽がフフと笑った。
大河と額を合わせ、目を合わせる。
「はい、黙っていなくなったりしません」
「よし、いい子だ」
笑い合った二人はまた抱き締め合った。
真っ暗になった窓の外。
大河の肩越しに視線を上げた美羽の目に、夜間飛行する飛行機のナビゲーションライトが見えた。
導く先にあるものは、何だろう。
そんなことをぼんやりと思いながら、美羽は言った。
「大河、キスして」
腕を緩め、美羽の顔を見た大河は目を丸くした。
酸素マスクをしたままの美羽の目が、じっと見つめている。
その澄んだ黒い瞳にドキッとした大河は、ゆっくりと聞いた。
「大丈夫なのか?」
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