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瓦解 #2
「お父さん、美羽に会わないうちは死ねない、って事ある毎に喚いて、美羽に会わせろって騒ぐのよ。
美羽、早くよくなってもらわないと困るわ」
視線を上げぬままのぶっきらぼうな言い方ではあったが、これが奈緒の、紛れもなく美羽に対するいたわりの言葉。
美羽の胸が、微かな瓦解の予感にじんとする。
美羽が、はい、とだけ小さく答えた時だった。
「ごめんなさいね」
微かな声がした。
美羽は、耳に届いたその声に、自分と母を隔てていた分厚く冷たい氷が解ける音を聞いた気がした。
ふう、と息を吐いた美羽は目を閉じ、言った。
「わたしも、ごめんなさい……」
素直に漏れた言葉だった。
奈緒を苦しめたことに対するものだった。
自分の存在が、奈緒を苦しめてきたのなら。
「あなたが謝ることじゃないのよ」
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