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泣き顔のまま「おがたせんせい……」と言う康太の頭を忍はクシャッと撫でて微笑んだ。
「ここを去る事になるから焦ったんだろう?
ここまで調べ上げて分かった事を放ったままにはしておけない、自分がここからいなくなる前になんとか決着をつけないといけない、そう思ったんだろう?」
忍の声は穏やかだった。
康太の心を大きく包む。
頷くことしかできなかった康太の胸は、忍に対して申し訳ない気持ちで一杯になっていた。
『この件は、俺が決着を着けてやる、だから、お前はもう関わるな』
忍にはそう言われていた。
忍は、自分の保身ではなく、康太の将来のためにそう言ってくれていたのだ。
オーベンのその気持ちを完全に無視してしまった、という事実が冷静になった今、康太の前に迫っていた。
「僕は……緒方先生の忠告を無視してしまいました……」
掠れる声を絞り出して言った康太に忍は「いいんだよ、それは」と優しく言った。
「今回のお前の行動は、どうしても解決したいという強い正義感で動いた結果だ。
後悔はしてくれるな。
ただお前には一つだけ覚えておいて欲しい事がある」
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