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忍の肩に顔を埋め、美羽はそう呟いていた。
「美羽、大丈夫だ、俺はずっと傍にいる」
耳から滑り込む、甘い響きを持った声。
心地よい痺れに美羽は肩を竦めた。
美羽の身体をそっと抱き上げた忍は繋がる点滴を気遣いながらベッドへと移動させた。
ベッドに移った後も、少しの間、二人は抱き合ったまま動かなかった。
「傍に、いてくれるの?」
囁くような微かな声に忍は美羽を抱く腕を少し緩めた。
美羽の顔を見、頬に手を添える。
「いる、どんな形になっても、俺は美羽の傍にいる。
だから、美羽は必ず元気になるんだ。
俺が必ず、美羽をまたピアノを弾ける身体にしてやる」
「お兄さん……」
病室の様子をナースステーションに届けるカメラの死角を知っていた。
忍はカメラに背を向ける形で、美羽にキスをした。
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