自己の責任に於いて

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 忍が美羽の病室を訪れる少し前のことだった。  あの教授会での騒動を受けて原の元に呼び出されたのは、忍一人であった。  教授会があった日の明朝、忍は外来の診察と病棟の回診が始まる前の時間に、通称、教授部屋と言われる原の部屋に来ていた。  朝の陽光が柔らかに差し込む部屋には、暖房も何も効いていないのか、と思うほどの冷たい空気が充満していた。 「彼は、なにか面白い事を言っていたね」  穏やかな声は、静寂に包まれた重い空気の中で不気味な振動と共に忍の耳に届いた。 明るい陽光差し込む窓の前に立つ原の姿は逆光となって影が出来、表情を窺い知る事は出来ない。 しかし、康太の事を〝彼〟と呼ぶその姿勢から、穏やかで静かな声とは裏腹に、肚に籠る怒りの度合いは量ることが出来た。 噴火前の火山のような不気味さだった。  もう名前を呼ぶ気にもならない、とでも言いたいのか。 忍は内心でそう吐き捨てた。 「そうですね、不都合な真実というのは、時として面白いものに成り代わるのでしょう」
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