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皮肉たっぷりに切り返した忍に、原も負けてはいなかった。
「今回の件は、君が自らのネーベンに、私の預かり知れないところで多種多様な知識を与えた、と受け取っていいかね」
「受け取り方は、それぞれですから。
先生がそう思われるのであれば、そうなのでしょう」
あくまでもひょうひょうと答える忍の態度に、原は、隠しきれない不快感で顔を歪めた。
しかし、ほう、と嘆息を漏らすことで元の表情を取り戻し、静かに言う。
「どこまで、本気なのかね?」
今まで遠まわしに問うてきた原が、とうとう単刀直入に突いてきた、ということか。
忍は原を真っ直ぐに見据え、その目から真意を探ろうとした。
「僕が思うに、先生ご自身が一番ご存知なのではありませんか」
心当たりがあるのなら、少しでも良心があるのなら。
忍の中にあったのは、崩壊したとはいってもこれまで何年も掛けて築いてきた消せない師弟関係に対し残る、情だった。
尊敬してやまなかった師に対する敬愛だった。
「私はね」
ぶつかり合っていた視線を先に切ったのは原だった。
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