ミルテの花

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「ミルテの花を知っているかね?」 「ミルテの花?」  抜けるような白い肌は、柔らかな春の陽光でも心配になるようだった。  緒方沙羽の主治医を務める原靖史は眩しそうに目を細めた。 「白く可憐な……そうだね、君のような花だ」  沙羽はふふっと笑った。 「先生、相変わらずお上手」 「そうかな」  靖史は、そっと沙羽の手を取った。 「ヨーロッパでは、愛を語る花として知られているらしい」 「そうなの……」  柔らかな風が、二人を包むように吹き抜けて行った。
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