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広がった安堵に、はいっ、と答えた康太だったが直ぐに疑問が浮かぶ。
「緒方先生……辞めるって噂、本当だったんですか?」
まことしやかに囁かれていた噂は、本当だったのか?
康太が聞いた時にはすでにパソコンに向かっていた忍は、手元を動かしながら答えた。
「ああ。でも、もう少しやらなければいけない事があるからすぐにでなはい。
お前のこれもちゃんと片を付けてやるから心配するな」
キーボードを動かしていた手を止めた忍は回転椅子を回して再び康太の方へ体を向けた。
「早く持ち場に戻れ。
今回の件は俺がしっかり教授に謝ってお咎めなしにしてやるから」
持ち場に戻れ、と促されて話しを切り上げられた康太は、忍に背中を押され、しぶしぶ、といった表情でその場を立ち去った。
緒方先生は、何を考えているのだろう。
緒方先生のやらなければいけない事って?
振り返った康太は忍の美しい横顔を見、胸に不安を過らせた。
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