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個室の病室は、常にドアが開け放たれている。
そこにカーテンが掛かり、廊下からの目隠しになっているのだが、カーテンを少しまくり、姿を現したのは忍だった。
サラリと揺れた黒髪が柔らかな日差しを反射していた。
麗しい笑みが美羽の心を掴んだ。
思わず胸元を押さえた美羽に、忍はそっと手を伸ばした。
「大丈夫か」
少し冷たいしなやかな手が、美羽が胸に当てた手に触れた。
美羽の胸が、トクン、と鳴る。
こみ上げる愛しさは、一生隠せない。そう思った。
「大丈夫。
でも、そろそろベッドに戻ろうと思っていたところなの。
お兄さん、手を貸して?」
優しく微笑んだ忍は、ああ、と答えて身体を屈めた。
「ほら、つかまって」
忍は美羽の腕をそっと取り、自分の首に掛けさせた。
捕まる力もなくなっていた美羽だったが、ありったけ力を振り絞って忍にしがみついた。
「お兄さん、お兄さん……」
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