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「大変だ。遼哉、これを読んでくれ。源蔵からの手紙だ」
「源祖父から」
遼哉はパソコンから目を離して手紙を受け取った。
『突然、すまない。
時間がないので、用件だけ記しておく。
港町にある文港堂書店に急いでくれ。本の挿絵として描かれていた妖怪が消えたらしい。
詳しくは文港堂書店の佐久間店主から聞いてくれ。
佐久間とは親しくしていたから私の名前を言えば、きっと問題ない。
頼んだぞ
源蔵』
なんだこれは。いきなりそんなことを言われても港町の文港堂書店ってどこだよ。挿絵の妖怪ってなんだよ。源祖父はなんでそんなことを知っているのかも疑問だ。
「樹実渡、これどういうことだ。この書店がどこにあるのか知っているか。なんで、源祖父がこんなこと」
「さあな。おいらにはわからない」
「それじゃ、どうにもできないじゃないか」
そこにグレンが何かを銜えてやってきた。目の前に銜えたものをぽとりと落としてじっとみつめてくる。
手紙か。しかも、源祖父宛ての手紙だ。
「あっ、それ」
樹実渡が突然大声をあげた。
「なんだ知っているのか」
「こないだ届いたんだ。源蔵はもういないっていうのになって思っていて忘れていた」
「しょうがないな、樹実渡は」
「けど、忙しかったからさ。宝文堂のことで」
そうか、宝文堂の復活を願って頑張っていたときに届いたのか。まあ、仕方がないか。
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