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「あ、ちなみに節分は豆食えば節分だっていうスタンスだから」
「撒くという本来の習慣はどこへ…」
…まあ、なるほど、梅ちゃんらしい。
深緑色の座布団に座って麦茶を一口飲むと、梅ちゃんが正面に座って、「で、」と切り出す。
「和葉はどう思うの? 蜂谷のこと」
いきなりその質問でしかも呼び捨てにするのか、と思いつつ枝豆を一粒押し出して食べる。
塩味、素朴でおいしい。
どう思う、って、まだ今日、初めて話したというのに。
「どうって……言われても、ですね」
「喋った感じどうよ? あ、エレベーターでなんかあった!?」
「……あー」
思い当たる節があり、間延びした声を発する。
そんなおかしな私に梅ちゃんが首を傾げる。
「やっぱなんかあったでしょ」
「……あった、っていうよりも、知った、っていう感じ」
「え、なにを」
「…………蜂谷さん、女の子に慣れてない」
「……え、うっそ」
本当だよ、と肯定し、麦茶を呷ってピーナッツを一粒、口に含んだ。
梅ちゃんも、知らなかったんだ。というか、蜂谷さんと会ったことなかったんだ?
「マジで?」
「うん。……だから、意外だなーって思った」
「今まで会ったことなかったから、全然知らなかった…皆川も話さないし」
「あと、それから…」
「それから?」
……少し気になる、というのも事実です。
そう言うと、梅ちゃんは「あら、まあ」と間抜けな表情をして言った。
……そりゃあそうだよね。
女の子に慣れてない人に「好きです」っていうのは、距離が離れる前提で言うしかない。
でも、唯一の救いは、まだ少し気になるという興味程度の感情しかないわけで。ここから発展するかは、わからない……って、なんかもう期待しているみたい。
「まあー、頑張れ」
テーブル越しに私の肩を手でぽんっ、と軽く叩き、梅ちゃんはピーナッツを数粒口に入れた。
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