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「あと10分ほど経てば業者の方が来るらしいです」
「……そうですか」
不意に彼がそう言ってきたので、素っ気なくそう返すと、彼は私の顔を覗き込むようにして「体調、悪いんですか?」ときいてきた。
薄くて形のいい唇と切れ長の双眼が近づいて来て驚いた私は、即座に「いいえ、大丈夫です」と否定し、彼から離れてエレベーターの隅に背中をくっつける。
女慣れしているんだな、と彼をちらり一瞥すると、彼は頬をほんのり赤くしてエレベーターのボタンに視線を落としていた。
え、あれ?
その意外な様子に瞬きを繰り返していれば、不意に彼が口を開く。
「……あの、すみません」
「…はい?」
「僕、大学行ってて、事情説明したいんですけど、一緒に来てくれませんか?こういう事故ってどう説明すればいいかわからなくて……」
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