香る庭

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希月さんが脱いだスーツの上着から携帯を取り出して耳に当てるのを見るとあんなに近くに感じていたのに遠くに感じてしまう 末期だ、と自分でも思う もう彼の目には私など映っていなくて、寂しさから手を伸ばしかけた自分の行動を戒めるように理性で押しとどめた スルリと彼の膝の上から降りて乱れた服を整える 母に似た緑の黒髪は先ほどの行為でバッサバサだ ストレートのはずなのに指が通らない 希月さんはさっきどうやってこれを触っていたんだろう
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