香る庭

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どうでもいいことを考えながら背後では私と同じように身支度を整えて、愛妻家と雑誌に載るほどの彼が優しい声色で奥さんと話す 実際は独身の女の家に来て、やる事をやってる関係なのに フッと嘲笑いすら込み上げてくるのに自分が一番愚かだと自覚しているから笑みはそのままため息に変わった その間に電話は終わったらしく「じゃあ帰るよ」と彼の声が響くものだから背を向けたまま頷いておく 彼が私に背を向けて玄関に行く所なんて見たくもない そして何より自分の今の顔を見られたくなかった 「薫…拗ねるなよ」 だから、そうやって奥さんに紡ぐ音と同じ優しい声で私を呼ばないでほしい 彼の腕が伸びてきて強制的に私の顔に手を当てて振り返るよう施される
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