第1章 一泊二日

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凄く有香が嫌な顔をする。 「頼むよ、いいだろう!」 有香の目の前で、大袈裟に合掌する直也。 「もう、しょうがないなぁ」 やむ負えず、承諾する有香。 山梨県清里高原にある、JR小海線の 清里駅に2人が到着した。 駅前からタクシーに乗り、千曲川に沿って 森林の中に入って行く。 狭い山道を登って行くと、小さな集落に 出た。 周囲を木々に囲まれ、僅か2軒の家しか 建てられていない。 周りには街灯も無く、寂しさだけが 辺りに漂流している。 木造平屋建てで、恐らく100年近く前に 建造されたのではないか。 トタンの壁がサビだらけで、かなりの 歴史を感じさせる。 タクシーが停まると、2人が降りた。 既に、隣りの民家は空家になっている。 直也の実家は、祖母が一人で住んでいた。 祖母は昔、大本教の信者であった。 教祖である、出口王仁三郎に教えを 受けた事もある。 出口王仁三郎(1871ー1948)は、戦時中に ふたつの新型爆弾が落とされて、 日本は戦争に負けると機関紙に発表した為 旧日本陸軍によって投獄されてしまい、 大本教自体も大弾圧を受けた。 出口王仁三郎は、預言者だったのだ。 祖母は大変大本教教祖を、尊敬して いたのである。 それは、母親がイタコだったからだろう、 最も影響を強く受けていたのだ。
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