第1章 一泊二日

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仏壇の横に一冊の本が置いてある、 どうやら出口王仁三郎著の 『霊界物語』の様である。 「お婆ちゃん、今でも大本教を 信じてるの?」 「そうさなあ、今でも出口王仁三郎様が 目の前に出てくるとよ。 ババがお前達くらいの歳に、京都の 講演会に行った時のことじゃ。 講演会の終わった夜、旅館に泊まって いたところ、目の前に王仁三郎様が 現れたんじゃ。それから時々幻となって ババに会いに来てくれる様に、 なったのじゃ」 祖母の瞳は真剣だ。 「それって、超能力じゃん!」 「出口王仁三郎様は天照大御神の弟 スサノヲノミコト様の産まれ代わりじゃ」 直也の問いに、必死に答える祖母。 「どういうこと?」 有香が、驚く様に尋ねると、 直也が苦笑しながら。 「ロシアの元ゴルバチョフ書記長は ローマ皇帝ジュリアスシーザーの 産まれ代わり、 元エリツィン大統領はブルータスの 産まれ代わりってお婆ちゃんの 自説なんだよ」 静かに頷く有香。 「ところで、お前達は何しに 来たのじゃ?」 直也と有香は、改まって。 「相談というのは、こちらの有香が コックリさんのやり過ぎで困ってるんだ」 祖母が身を乗り出していたが、一旦 身を引いて。 「それは大変じゃ、やり続ければ悪霊に 取り憑かれて死んでしまうぞ」 「それは、本当ですか?」 有香の表情が曇る。 「本当じゃ、そなたの顔に死相が 出ておる」 「へっ!どうしたら?」 驚いた有香が、縋る様に尋ねる。 「彼女の中には、5体の霊が憑いてるから 追い出せば元に戻る」 「おばあちゃん・・・」 「私に任せなさい」 有香と直也は、祖母の言葉に 固唾を呑んだ。 仏壇の前に行き、念仏を唱えだした。 「オニサブローサマー!」 そのお経は5分程で終了した。
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