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「九条の恥になるような事はするな」
どこまでも冷たい叔父の言葉に誠はただ、「はい」と頷くしか出来なかった。
叔父は誰よりも厳しく誠に接するが、それもこれも九条という家を守るため。跡取りである自分を守るためなのだと、誠は信じていた。
笑顔一つ見せた事のない叔父が、いつか立派に父の跡を継いだ誠を見て喜んでくれたならこれまでの厳しい言葉も、これからの息苦しい生活も報われる気がした。
重苦しい食事の時間を終え、自室に戻るとやっと肩から力が抜けた。
机の前に座り、一番上の引き出しを開ける。そこには可愛らしい柄の紙に包まれた飴がコロンと二つ、入っていた。
その一つを取り出して飴を口に入れる。
甘い、優しい味が口いっぱいに広がる。
それはまるで、久遠の笑顔のような味だった。
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