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4 卒 業(続き)
その時、私は、ふといつもなら反転しているはずのタクシーの姿が
ないことに気付いた。
「ねぇ、もしかしてバスで来たの?」
しかし玄関に迎え入れた彼は、当たり前といった面持ちで頷く。
「うん。俺、バイトになるから贅沢できないし」
そう言われて、私は更に気付いた。
「あれ? バイクは?」
確か大阪に行く時は、彼は、自分のバイクで向かったはず。
しかし、ダイニングに向かう途中で振り返った私の目の前で
彼の顔が、わずかに寂しげに笑った。
「売った」
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