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だから孝弘は遠慮しないことにした。会社のことは気になるし、できる範囲でやれることはするつもりだが、まずは祐樹と大連の仕事を優先すると決めた。
「まあ、いいじゃない。大連はこれから2年間のプロジェクトなんでしょ。そのあいだにゆっくり考えて決めれば。孝弘だって気が変わってあっちに入社するとか言うかもしれないし」
「いやー、ないだろ、それは」
いくつもの会社の通訳やアテンドを引き受けているうちに、正社員にというスカウトは何度か受けた。けれども孝弘はそれらをすべて断っている。
収入的にはいまより安定するのかもしれないが、金銭よりも自由に仕事を選べる気楽さのほうが重要だった。
「やっぱ企業で正社員って、俺の性格に合わないみたいで。今回の専属契約もホントいろいろ大変だったしさ」
祐樹と一緒に仕事ができるという条件がなかったら絶対契約しなかっただろう。でもこの先、一生分の祐樹を手に入れるためだったから、あえてこの契約をじぶんの会社より優先したのだ。
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