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「すっげぇー」
「えっ、なに?」
「ほら、あれ。」
外に面したマックのカウンター席で隣に座るケンイチの目線を追うと男女が抱き合っていたーーーって言うより女の人を後ろから男の人が抱きしめていた。
「凄いね、こんな所で。盛り上がっちゃったんだ。」
段々と日が落ちるのも遅くなってもう7時前だと言うのにまだ薄明るい。
さっき降り始めたミストみたいな雨が目線の先の二人にふわりと降り掛かっている。
けれど、
「あれ?男、行っちゃったよ。なんあれ?どゆこと?」
「うん、女の人も追っかける感じないね。」
別れ話のもつれ、とか?
なんとなくだけど、格好良くスーツをビシッと着こなした女の人はきっとラフな格好をしていた男の人よりも歳上なのかもしれない。
ぼんやりと横顔しか見れなかったけど二人の纏う雰囲気がとても良い感じがしたんだけどな。
ただの内輪揉めかなぁ。
年下彼氏が浮気したとか?
いや、でもあれだけ綺麗な彼女がいながら……
「まっ、どーでもいいけどね。」
あれこれ考えを巡らせるもケンイチのどーでもいー発言で一気にこちらへと引き戻される。
「まっ、そーだね。」
残りのドリンクを一気に飲み干すと
「どうする?真っ直ぐ帰る?それともうちに寄ってく?」
「うーん…」
少し悩むものの
「じゃ、決まりな。おし、行くぞ。」
とケンイチ。
ーーーだったら、一々聞かないでよ。
なんて毎度の事だから私も返さないけどね。
さっさと行く割には私のトレイも持って行くケンイチにニヤける顔を見られないよう急いで後を追った。
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