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「ありがとう」
彼女はそう言って、僕に眼鏡を返してきた。
「あのね、お母さんとお父さんに会ってきた。ごめんね、って伝えた。」
彼女は泣いていた。
「ちゃんとさよならって言ってきたよ。お父さんとお母さんのこと、ずっと忘れないからって。お父さんとお母さんが少しでも長生きできるように見守ってるからって。」
彼女の涙も、透明できらきらと光っている。
夕日は赤い。
手を振る彼女は、もう線路に飛び込んだりしない。
赤い夕日に彼女が溶けて行った。
「ただいま」
家に帰ると、両親が遅かったねと心配した。
「今日はね、また素晴らしい物を見ることができたんだよ。」
何を見たのと両親が訪ねた。
「愛、かな?」
両親はきょとんとしていた。
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