その時、嵐の後の海は…

2/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
その時、海は静かだった。 ――が、昨夜の嵐の後のうねりが、まだ残っていた。 原因は、襲来(しゅうらい)した、猛烈な台風のためだった。 その海面で、一枚の板に必死ですがりついている、三人の男の姿があった。 ガモーとロントとジミーだ。 それぞれ二十代前半で、GパンにTシャツ姿だった。 元々は全員、デザインの違うメガネをしていたが、海に飛び込んだ時に曇ったので、捨ててしまったのだった。 昨夜、その嵐ために転覆したW貨物船は、すでに海面に無かった。 彼らは、その貨物船の乗組員だった。   太陽の位置からみて、今の時刻は昼過ぎ頃であり、降雨の心配はなかった。 海面の水温は、それほど低くなかったが、彼らに掴まれている板は、今にも沈みそうだった。 「俺たち、なんとか助かったけど……これからどうする?」 「とりあえず、このまま待つしかないだろう」 「待つって何をだよ?」 「救助に決まってるだろう」 「だけど、沈没したの夜中だよ。SOSの発信もしてないはずだ」  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!