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その時、海は静かだった。
――が、昨夜の嵐の後のうねりが、まだ残っていた。
原因は、襲来(しゅうらい)した、猛烈な台風のためだった。
その海面で、一枚の板に必死ですがりついている、三人の男の姿があった。
ガモーとロントとジミーだ。
それぞれ二十代前半で、GパンにTシャツ姿だった。
元々は全員、デザインの違うメガネをしていたが、海に飛び込んだ時に曇ったので、捨ててしまったのだった。
昨夜、その嵐ために転覆したW貨物船は、すでに海面に無かった。
彼らは、その貨物船の乗組員だった。
太陽の位置からみて、今の時刻は昼過ぎ頃であり、降雨の心配はなかった。
海面の水温は、それほど低くなかったが、彼らに掴まれている板は、今にも沈みそうだった。
「俺たち、なんとか助かったけど……これからどうする?」
「とりあえず、このまま待つしかないだろう」
「待つって何をだよ?」
「救助に決まってるだろう」
「だけど、沈没したの夜中だよ。SOSの発信もしてないはずだ」
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