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「やっぱし、凛々しい美丈夫さんでごあんなぁ」
いつのまにか、俺も首を取り戻していた。ボロボロだった軍装も、今はシミも破れもなく、白く輝いている。
俺たちは、その心持にふさわしい姿になるのだろうか。
だとしたら、なんて無駄な時間を過ごしてきたことだろう。
だが、俺がこの心持になるためには、この女に出逢うことが必要だったのだ。
俺は女の手をとった。
ここは暗すぎる。今の俺たちにふさわしい、もっと明るく美しいところへ行こう。
「ああ、あそこに光が」
女が指さした。彼方に光が見えた。
準備ができたものには道が拓かれるのだ。
俺は女の手を握りしめ、言った。
「あそこへ行こう」
女はまたにっこり微笑んで、うなずいた。
俺は白桃のような女の頬に、見とれた。
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