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確かあれは1か月前
先生に叱られ
親になじられ
塾でのテスト結果も散々だった
「けっこうがんばりましたよ~自分なりに、もう、帰りたくね、ダリ~」
塾の帰りに歩きながらLINEグループで盛り上がった
カランカランカラン
自販機から落ちてきた炭酸水をグッとイッキに飲み干そうとしたんだ
すると、自販機の灯りがチカチカと点滅して、それに気を取られていると
「艱難辛苦を乗り越えた君が選ばれた、
君が勝者になる道は確約されている
君には、敗者復活戦のメンバーを選ぶ権利が与えられた」
「うわっ、なんだよ急に!誰っ!こわっ!」
目の前に、場違いなシルクハットを目深に被った紳士が現れた
「これから数日後に、君は僕を思い出す
まず、最初は屋上からだ・・・」
そう言って名刺を差し出された
僕は、ぼりぼりと頭を掻きむしりながら
「なに言ってるんですか、」
もうそこに、紳士はいない
「え、な、なんで?」
辺りを見回したけれど、どこにもいない
点滅している自販機の灯りの下で名刺を見た
「トランプ?」
よく見ると名刺ではなくトランプカードだ
つるつるの真っ白い面の反対の面にはJの一文字
「J・・・名前かな、ジャック?」
親に言われるまま進学校を目指して
頼んでもいないのに月謝の高い進学塾に通わされ
その為に母さんはパートに出て
弁当も晩飯も出来合いもので
「また、手抜きだな」
父さんの愚痴を聞かされ
「洋司は父さんみたいにならないようにね」
母さんの愚痴を聞かされる日常
僕は、いったいなんで生まれてなんで生きてんだ
川にはロープを渡して、こいのぼりと吹き流しが泳いでいる
「おう!洋司おはよ!」
「吉広おはよ~」
吉広は幼馴染で幼い頃からいつも一緒にいる
こいつは優秀だから、いつも比べられてきた
親は張り合ってんのか憧れてんのか
吉広の大学教授の父親と経営者の母親に笑顔を振りまく両親
「よその地域からも来るらしいわよ、吉広君と同じ進学塾に行きなさい」
「吉広、お前彼女できたって正気?」
「ああ、ずっと好きだったんだ」
「受験生なのに、さすが余裕だな」
「余裕じゃあねぇよ、必死、親のメンツを保つ為に必死」
バレたらどーすんの」
「洋司、俺たちの人生だぜ、親のゲームの駒みたいに生きんの変じゃね?」
「ゲームね」
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