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「いい高校に入って、いい大学に入って、いい会社に入社して、いい家庭作って、
いい子供に恵まれて、大人たちが決めたいいストーリーを生き続けんだぜ」
「うわ、ゾッとする」
「“あなたの為”って言ってる割に感謝を望んで、失敗すれば“だから言ったでしょ”」
面白い顔して親の真似してる
吉広すげーストレス溜まってんだな
「吉広、塾の帰りにカラオケいこうぜ」
「デート」
「マジでっ!どんな娘か見たい見たい!」
「この娘」
携帯の画面いっぱいの真面目そうだけど可愛い女子の笑顔
「あ、この娘、塾で見掛けた、吉広ナンパしたの?」
「向こうから、手紙もらったんだ」
「・・・で?」
「で?」
「この子に触った?」
「・・・あー・・・それ、聞きたい?」
「聞きたい、聞きたい」
「柔らかい」
「どどどど、どこ?え?どこ触った?」
「あたたかい」
「おいおい吉広、何したんだよ、どんな風に?どんな風に?」
チャイムが鳴った
ガラガラガラ
「はい、着席~!」
吉広が笑ってる
あ~一時間目からムラムラするぜ~
僕、勉強は苦手
かといってスポーツが得意なわけでも無くて
せいぜいゲーム実況見るくらいで
趣味と言えば、SNSで誰かの愚痴見て笑って
別の誰かの垣間見える人生に賛否両論の多い方の意見に便乗して
あり得ないニュースを開いて
いつも誰かのなにかを疑似体験しては、経験した錯覚に陥ってたんだ
「ただいま~」
兜の形をしたケーキがテーブルに置いてある
もう子供じゃあ無いのに
「お帰り~!ちょっとちょっと、洋司聞いた?」
なんで、そんなに楽しそうなの
「なにが?」
「吉広君が、隣の地区の中学校の、ほら、洋司も通ってる進学塾の!」
なんだよ、早く言えよ
「女の子を妊娠させたんだって!」
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