1話 ゲームのはじまり

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「いい高校に入って、いい大学に入って、いい会社に入社して、いい家庭作って、 いい子供に恵まれて、大人たちが決めたいいストーリーを生き続けんだぜ」 「うわ、ゾッとする」 「“あなたの為”って言ってる割に感謝を望んで、失敗すれば“だから言ったでしょ”」 面白い顔して親の真似してる 吉広すげーストレス溜まってんだな 「吉広、塾の帰りにカラオケいこうぜ」 「デート」 「マジでっ!どんな娘か見たい見たい!」 「この娘」 携帯の画面いっぱいの真面目そうだけど可愛い女子の笑顔 「あ、この娘、塾で見掛けた、吉広ナンパしたの?」 「向こうから、手紙もらったんだ」 「・・・で?」 「で?」 「この子に触った?」 「・・・あー・・・それ、聞きたい?」 「聞きたい、聞きたい」 「柔らかい」 「どどどど、どこ?え?どこ触った?」 「あたたかい」 「おいおい吉広、何したんだよ、どんな風に?どんな風に?」 チャイムが鳴った ガラガラガラ 「はい、着席~!」 吉広が笑ってる あ~一時間目からムラムラするぜ~ 僕、勉強は苦手 かといってスポーツが得意なわけでも無くて せいぜいゲーム実況見るくらいで 趣味と言えば、SNSで誰かの愚痴見て笑って 別の誰かの垣間見える人生に賛否両論の多い方の意見に便乗して あり得ないニュースを開いて いつも誰かのなにかを疑似体験しては、経験した錯覚に陥ってたんだ 「ただいま~」 兜の形をしたケーキがテーブルに置いてある もう子供じゃあ無いのに 「お帰り~!ちょっとちょっと、洋司聞いた?」 なんで、そんなに楽しそうなの 「なにが?」 「吉広君が、隣の地区の中学校の、ほら、洋司も通ってる進学塾の!」 なんだよ、早く言えよ 「女の子を妊娠させたんだって!」
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